<森からつくる原木椎茸栽培>


軽トラックで山道を進み雑木林の中に入ると、平坦な森の中に見渡す限り丸太が立てかけられた、不思議な光景が表れました。ここはヤマザキ椎茸園が管理する、椎茸の原木栽培の現場です。
 


椎茸栽培は、大きく「菌床栽培」と「原木栽培」に分けられ、前者はおがくずなどを用いた培地を施設内で栽培します。一方、後者は名前の通り、乾燥させた原木を用いて山の中で栽培する方法です。

菌床栽培では、施設内の温度や湿度を管理することによって、短期間で安定した収穫が見込めます。一方、原木栽培は自然の中で時間をかけて育てていくため、体力も時間も必要になります。このような栽培効率の違いから、近年市場に出回る椎茸は菌床栽培の椎茸が大半を占めるようになりました。


 今回訪問したヤマザキ椎茸園では、三代にわたり原木栽培を続けています。原木栽培は、「ほだ木」と呼ばれる原木を山で伐採するところから始まります。そして、ほだ木を適した長さに切り揃えて乾燥させ、ドリルで穴をあけて椎茸の菌を打ち込む「植菌」と呼ばれる作業をします。植菌を行ったほだ木を地面に寝かせて二年待ったあと、ほだ木同士を対にして立てかけて収穫を待ちます。

 このような長い過程と時間を経て原木の椎茸になるわけですが、ヤマザキ椎茸園三代目の山嵜隆さんは「原木栽培は森づくりが仕事」だと言います。「椎茸は自然と生えてくる」ことを前提に、「美味しい椎茸の育つ環境を整えること」が一番に重要だと教えてくれました。


 

ヤマザキ椎茸園の栽培現場は、原木栽培の中でも珍しい雑木林の中にあります。一般的に、原木栽培は針葉樹林で栽培されますが、針葉樹は落葉しないため日光が入りづらくなります。一方、雑木林では針葉樹のほか落葉する広葉樹と竹など、様々な木が森を構成しているため、程よく日光が注ぎます。より自然に近い状態になるよう、森を手入れすることで、「どんこ」と呼ばれる高級な椎茸が発生する確率が高くなるのだそう。

 

雑木林は台風や虫害によって被害を受けることもしばしばあります。それにより木が倒れたり枯れたりしてしまうと、日光がほだ木に直接降り注ぐことになり、収穫に影響が出てきます。椎茸が育つために適した日光の量になるよう調整して、森の環境を整えます。

 


「森づくり」から始まるヤマザキ椎茸園の椎茸は、乾燥した状態でも豊かな香りをまといます。水で戻しても弾力のある肉質は、じっくりと時間をかけて育った証拠です。 

現在、二代目と三代目が管理する椎茸園には、その栽培方法を学ぼうと多くの原木栽培の農家が訪れます。日本人にとって身近な食材である椎茸から、「森づくり」へつながるなど、「食べる」ということは不思議な力を持っていると考えさせられます。

六月上旬の訪問当初、原木椎茸は春の収穫が終わったばかりで椎茸を見ることはできませんでした。秋の収穫が始まったころ、また改めて訪問してみたいと思います。

販売:おかげ横丁 伊勢路名産味の館

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