<美杉の野草茶>



津市美杉町下之川の、山や畑に囲まれた築140年の古民家。夏の日差しが降り注ぐ軒先に干されている、野草の隣でニコニコと出迎えてくださったのが、坂本幸さんです。
美杉町(旧美杉村)に嫁がれてから50年、79歳の坂本さんの暮らしは、見失いかけていた大切なことを思い出させてくれました。
    

坂本さんがつくっているのは野草茶や干し野菜。一般の製造者はほとんどの乾物を機械で乾燥させますが、坂本さんはお日さまの力と、全国的にも珍しい(坂本さんしかやってないかも…)炭火の力で、じっくりじっくり乾かします。

「きれいな空気があるところで太陽にしっかり当てるのがいいんだよ」
自然にまかせてほんの少しだけ人の手でつくりあげていく。そんな坂本さんの暮らしを体で感じたのが、お昼ご飯でした。


「ちょっと手伝ってね」


坂本さんに言われて入った台所で、手づくりの干し大根と干しにんじんをフライにしていきます。干し大根をつくるには天日に干して、蒸して、また干して仕上げるため、2週間ほどかかるのだとか。揚げ油も坂本さんのご主人が育てた菜種からしぼった油というから驚きです。
 食卓にはこんがりときつね色になったフライと、日陰にひっそりと生える野草、いのこづちの和え物、ご主人がさばいた鹿肉の佃煮など手づくりのおかずが並びます。おかずだけではなく、サラダのマヨネーズも手づくりです。


揚げたてのフライは、私の知っている大根とにんじんにはないぎゅっと詰まった甘みがあり、噛むほどにじゅわっと出てくる旨みが身体に染み渡る美味しさでした。ただお腹を満たすためだけに、喉を潤すためだけに食べたり飲んだりするのではない…
見失いがちだけれども、見失ってはいけないものに気づかせてくれる、そんな時間をいただきました。

フライにサラダ、えんどう豆の煮物、きゅうりの粕漬け、ひじきと切り干し大根の煮物、いのこづちの和え物、鹿肉の佃煮、夏野菜の梅酢和え、卵寒天。
 
食事が終わり、蛇口から鍋にためていた水がいっぱいになりそうだからと水を止めようとすると、坂本さんの口からこんな言葉が。
「いいんだよ、流しっぱなしでも。この家の水はね、裏の山からきてるんだよ。」
…すごい。
 

便利さや効率が求められ発展してきた日本に、今もこんなに自然とつながる暮らしがあります。心も体もあるべき姿に整えてくれる、人を豊かな気持ちにさせてくれる、そんな坂本さんの暮らしと笑顔に出会うことができました。
 坂本さんのつくっておられる野草茶のうち、おかげ横丁では十数種類の野草をブレンドした野草茶、どくだみ茶、杜仲茶、よもぎ茶、まこも茶、すぎな茶、山取り桑の葉茶、枸杞茶、枇杷茶を販売しています。

自然の力をいただいた野草茶を試してみてはいかがでしょうか…


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